カエターノ『セー』へのインタビューで、雑誌では紹介できなかった貴重な発言を紹介していきます。
(あなたをはじめ、同世代のMPBアーティストは現役でクリエイティヴな活動を続けている。でも他の国では非常に特殊なアーティストを除いて、このようなことはない。自分も含めた同世代のアーティストたちが音楽活動を40年近く続けていても創作意欲が衰えないのは、どうしてだと思っていますか?) それも、時々聞かれる質問だけど、まず僕は、それほど珍しいことだとは思ってない。ブラジル国外には、そういうケースがたくさんある。例えば、ボブ・ディランがそうだ。ルー・リードだってそうだし。そりゃボブ・ディランも、60年代のようにヒットパレードのトップに再び顔を出したりといったことじゃない。それは、僕の場合やシコなんかでも同じことだ(笑)。しかし、敬愛の念は残っているし、自己リスペクトも残っている。自分のレベルに忠実に仕事を続けていこうとする、自分自身への要求もね。僕は、それは普通だと思うよ。レイ・チャールズも、天才的な曲を書き続けながら高齢で亡くなった。フランク・シナトラだって、世界一のシンガーであり続けながら、ほとんど90歳まで生きた。ミック・ジャガーにいたっては、73歳になってもステージに上がっている。今でも、ロック/ポップ史上屈指のライヴ・パフォーマーだ。同じレベルで続けている。誰も彼とは比肩できない。実はそれが、いつもローリング・ストーンズの強みだったわけだけどね。そりゃ、過去には素晴らしい曲もあったけど。やはり曲が素晴らしいのはビートルズだった。ローリング・ストーンズには、何曲か素晴らしい曲がある。ただ、ビートルズには決して及ばない。でも、ステージではストーンズは天才的だった。今もだよ。
それに、サラ・ヴォーンだって、彼女よりも巧く歌える女性歌手がアメリカン・ジャズに登場するのを見ないうちに亡くなってる。むしろ、今日まで登場していないわけだけど。エラ・フィッツジェラルドもだ。だから、そんなに稀なことじゃないと思うんだ。普通だよ。パブリック・キャラクターが常に入れ替わることを欲しているのは、市場だ。それに、市場を追いかけてるマスコミだ。彼らは毎日新聞を売らなきゃいけないから。公的人物だちが入れ替わるほど、新聞が売れるから好ましいんだよ。もっとも、交代があるというのが悪いというわけじゃない。むしろ、とてもいいこと、健康的なことだと思う。例えば、あなたが23歳だとして、同じ23歳の人間が曲を書いて歌い、演奏してみせているとする。この人間は、あなたが感じていることを感じて、表現している。同じ世代だからね。つまり、みんながみんな、過去に地位を確立したアイドルに注目しているのはよくないと思うんだ。例えば、アルゼンチンは長い間 ? とても美しいことだとは思うけど ? タンゴの重みに苦しんだ。60年代まで、他のどんなアーティストよりもカルロス・ガルデルのアルバムが売れていたんだから(笑)。ガルデルは30年代に亡くなってるんだよ。やっぱり、自分と同世代のアーティストが好きだというのは、健康的なことだと思うんだ。そういう人たちが登場した方がいいと思うし、登場したら嬉しい。他方で、年をとってきたら若い世代からは忘れ去られねばならない、若い世代からは関心を示されるはずがない、とも思わない。彼らには、興味深いものを作り続ける能力があるんだから。そもそも、そんなことは、どんな有名詩人にも有名画家にも有名なポップ歌手にもジャズ歌手にも起こっていない。ロックの歌手にだってね。だから僕は、そういうケースはあまり知らないし、一種の神話じゃないかと思う。僕やシコ・ブアルキやミルトン・ナシメントや…普通じゃないかな。
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2006/11/03(金) 12:06:50 |
カエターノ・ヴェローゾ[Caetano Veloso]
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ナラ・レオン(NARA LEAO)[1942-1989]
今日は、新入荷商品の中から『ナラ・レオン/プログラマ・エンサイオ1973』を紹介させて頂きます。
『NARA LEAO/PROGRAMA ENSAIO 1973(DVD)(ナラ・レオン/プログラマ・エンサイオ1973)』
BiscoitoFino 717 3675円(税込)
本作が録画されたのは、1973年。軍政批判が理由で69年以来海外亡命生活を続けていた彼女が、『美しきボサノヴァのミューズ(原題:10年後)』を録音したのが、1971年のフランスはパリ。そして、本作も73年にフランスで録画されています。 白黒の映像の中で、歌い、ギターを弾き、語り、笑うナラの姿がとにかく美しい作品です。本編に登場するのはギターを抱える彼女たった一人。当時30才のナラの容姿が美しいことはもちろんですが、パーソナリティーの美しさも映像からにじみ出ています。10代をボサノヴァ・ムーヴメントの渦中で育ち、歌手としてのデビューしてからはボサノヴァを歌うことを避け、プロテスト・ソングやモーホのサンビスタの作品ばかりを歌っていた彼女が、海外でボサノヴァに再び真摯に目を向け、ボサノヴァに取り組みはじめた。その瞬間の、個人的にはもっとも見たかった時期のナラがこの映像の中にいます。この時期を過ぎると、ブラジルへ帰国し、しばし音楽活動から離れてしまうので、これぞグッド・タイミングというタイミングの映像と言えます。キャリアについて丁寧に解説しながら、プロテスト・ソング、サンバ、ボサノヴァの数々を自分のギターを伴奏に歌います。「美しきボサノヴァのミューズ」の美しい姿に、息を飲むばかりです。 『ナラ・レオン/美しきボサノヴァのミューズ』
個人的に、『ナラ・レオン/美しきボサノヴァのミューズ』は、日本盤で再発されたCDでボサノヴァを聞き始めた僕が、ボサノヴァに触れた始めの頃に聞いたCDでした。当時同作は日本で世界初CD化されたばかりで、「THE DIG」というロック雑誌の「今なら手に入る幻の名盤」なんていう特集を読んで買ったのを覚えています。はじめて聞いた印象は、「結構暗いな」程度の印象でしたが、それでもやっぱり気になって繰り返し聞いてました。このアルバムに収録された曲の大部分が、ボサノヴァの有名な曲であると知ったのは、ずっと後のことでした。 ナラ・レオンはイメージの中でこそ、ずっと「美しきボサノヴァのミューズ」でしたが、初めて見た彼女の映像でその美しいイメージが動き始めました(彼女に関する映像がDVD化されるのは本作が初めてのようです)。映像を流しているだけでも、こんなにも図になるボサノヴァ映像も他にないだろうと思います。 作品内のナラの発言より(デビューしてからボサノヴァを歌わなかったことに関して)「世の中には微笑み、愛、花以外のものもあることを知ったわ。満足に食べれない人や、貧しい人がいた。だから、私は(美しいことばかり歌う)ボサノヴァを録音したくなかった。世の中に参加して、現実を表現したかった。」「こんな批判があったわ。お金に何不自由していないコパカバーナの少女が、貧困について歌っている。私はそんな批評をまともに取り合う気もなかった」 (ジョアン・ジルベルトについて)「私が出会った中で、もっも魅力的な人よ。みんなが彼の言葉づかいを真似していた。彼の穏やかなしゃべり方を。」 曲目:Tr01_Soneto (Chico Buarque) Tr02_Cantores do Radio (Lamartine Babo / Joao de Barro / Alberto Ribeiro) Tr03_Insensatez (Vinicius de Moraes / Tom Jobim) Tr04_Preconceito (Wilson Batista / Marino Pinto) Tr05_ Voce e Eu (Carlos Lyra / Vinicius de Moraes) Tr06_ Diz que fui por ai (Ze Keti / H. Rocha) Tr07_Opiniao (Ze Keti) Tr08_Carcara (Jose Candido / Joao do Vale) Tr09_Recado (Casquinha / Paulinho da Viola) Tr10_A Banda (Chico Buarque)Tr11_Quem te viu Quem te ve (Chico Buarque) Tr12_Com acucar Com afeto (Chico Buarque) Tr13_Primavera (Carlos Lyra / Vinicius de Moraes) Tr14_Joana Francesa (Chico Buarque) Tr15_Quando o Carnaval Chegar (Chico Buarque) Tr16_Pra Dizer Adeus (Edu Lobo / Torquato Neto) Tr17_Morena do Mar (Nara Leao / Dorival Caymmi) Tr18_Berimbau (Baden Powell / Vinicius de Moraes) Tr19_Deus me Perdoe (Humberto Teixeira / Lauro Maia) Tr20_Nao me diga adeus (Paquito, L. Soberano / J.C. da Silva) Tr21_Camisa Amarela (Ary Lobo) Tr22_Fez Bobagem (Assis Valente) Tr23_Tatuagem (Chico Buarque / Ruy Guerra) 本作は
WEBショプ より購入できます。
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"クアトロシエントス" の久々ピュア・タンゴライブ、6日に!(11/2)
テーマ:本日のCD・レコード - ジャンル:音楽
2006/11/03(金) 00:15:59 |
商品紹介[ブラジル]
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