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モスカ新作『+ NOVO DE NOVO』~もっと再び新しく、モスカの音宇宙を感じる~

「モスカの作品は、個の中にある宇宙のようなものだ」(ハミロ・ムソット)


 モスカの新作アルバムが入荷しています。タイトルは『+ NOVO DE NOVO』。

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CD『+ NOVO DE NOVO』 Som Livre 06642 /2415円
 ソロになってからの8作目となる今作『+ NOVO DE NOVO』は、2003年発表の前作『Tudo Novo de Novo』の収録曲を中心としたライヴ録音作品。2004年の12月にブラジリアで行われたライヴの実況録音盤だ。『Tudo Novo de Novo』からの収録曲が18曲中8曲と最も多いが、その他の曲はソロ・キャリアの中から人気のある曲が万遍なく演奏された感があり、前作までの集大成した感があるライヴ。
シンプルなバンド編成でのライヴで、華美な演出はされていない。が、達者なバンド・メンバーとシンプルで絶妙な演奏が繰り広げられる。モスカもプレイヤーとしても一流であるが脇を固めるメンバーも素晴らしい。ベース=ドゥンガDunga、ドラム=クリスティアン・オーエンスChristiaan Oyens、キーボード&サンプラー=サシャ・アンバッキSacha Amback、パーカッション=ハミロ・ムソットRamiro Musotto。中でもサシャ・アンバッキの繊細なプレイは一際耳に残る。誰かが前にでるのではなく「歌」としてシンプルに響くようなアレンジになるように心遣われている。ギターと声による弾き語りというシンプルなスタイルで十分に魅力的な音楽を聴かせる“モスカ”という希代の才能を中心とした端正なアンサンブルだ。ポップスとして優れていて、かつ哲学的な歌詞をもつ曲自体の良さも光る。後半Track14、15、16での、ブラジリアの青少年たちによって結成された、コーラスも瑞々しい打楽器団バテ・ラタBate Lataの共演もアクセントになっている。


パウリーニョ・モスカPaulinho Moska(1967年、リオデジャネイロ生まれ)
 前作『Tudo Novo de Novo』が国内リリースされているパウリーニョ・モスカ。ブラジルでは同アルバム発表後にEMIからソン・リヴリへ移籍しているが、移籍後のソン・リヴリから早くも再発されている程人気のある作品だ。簡単にプロフィールを紹介すると、1987年にリオで結成したイニミゴス・ド・ヘイというバンドでプロ・デビュー。バンドの中核として活躍し、ヒット曲の多くのモスカのペンが絡んでいた。1991年にソロ活動をするためにグループを脱退。オルタナティヴ・ロックが全盛期だった93年に初のソロ・アルバム『Vontade』をリリース。ガレージ・バンドの佇まいで収録されたアルバムだった。徐々に変化はあったものの、1999年5th『Mobile』より、それまでのロック・スタイルからモスカが求める音景色は明らかに変化した。ロック・バンドのスタイルにこだわらず、録音に参加したマルコス・スザーノやサシャ・アンバッキといった気鋭のミュージシャンとともに、重く深淵なポップ・ミュージックという新たな次元に突入する。次作でもその旅は続くが、03年『Tudo Novo de Novo』では、新たな音楽的理解者となったホルヘ・ドレクセレルやマルチナーリアを交え、ポップ・ミュージックという枠を出た経験を活かしながら、シンプルで心の深いところまで届く歌を聴かせてくれた。先に触れたように国内外での人気も高い。その『Tudo Novo de Novo』の曲を中心に、随所に短くないキャリアから選りすぐられた名曲を交えた、集大成ライヴ。モスカに宿る音宇宙を感じられる。

収録曲
01.Tudo Novo de Novo(すべては再び新しい、『Tudo Novo de Novo』より)
02.Lagrimas de Diamantes(ダイヤモンドの涙、『Tudo Novo de Novo』より)
03.Reflexos e Reflexoes(反射と考察、『Tudo Novo de Novo』より)
04.O Jardim do Silencio(沈黙の庭、『Tudo Novo de Novo』より)
05.A Seta e o Alvo(矢と標的、『Contrasenso』より)
06.Trampolim(トランポリン、『VoNtaDe』より)
07.Admiracao(感嘆、『Pensar e Fazer Musica』より)
08.A Idade do Ceu(空の時代、『Tudo Novo de Novo』より)
09.Pensando em Você(君のことを考えている、『Tudo Novo de Novo』より)
10.Seu Olhar(セウ・オリャル、アルバム初収録)
11.Sem Dizer Adeus(さよならは言わない、『Mobile』より)
12.O Bilhete no Fim(最後の伝言メモ、『Tudo Novo de Novo』より)
13.Um Mobile no Furacão(ウン・モビリ・ノ・フラカゥン、『Mobile』より)
14.Relampiano(ヘランピアノ、『Contrasenso』より)
15.O Ultimo Dia(最後の日、『Pensar e Fazer Musica』より)
16.O Mundo(世界、『Mobile』より)

*ボーナス・トラック
17.Cheio de Vazio - Faixa Bonus(虚ろでいっぱい、『Tudo Novo de Novo』より)
18.Admito que Perdi - Faixa Bonus(失ったことを認める、『Contrasenso』より)


DVD盤もあります
DVDmoska.jpg
DVD『+ NOVO DE NOVO』 Som Livre 02039 /3990円
『トゥード・ノーヴォ・ヂ・ノーヴォ』発売時のインタヴューで、モスカはあのアルバムが写真を撮り始めた影響がとても色濃く反映された作品であり、ツアーだけではなく展覧会や俳優(彼は劇団に属していた時期もある)などもやってみたいと言っていた。ソン・リヴリへ移籍後初となる新作は、2004年に行われた『トゥード・ノーヴォ・ヂ・ノーヴォ』ツアーのブラジリア公演の模様を収録したライヴ盤だ。サシャ・アンバッキ(キーボード&サンプラー)、ドゥンガ(ベース)ら、アルバムでもお馴染みのメンバーだが、言うなれば極めてオーソドックスかつシンプルなポップス作品集であった同作の世界観を極めるためか、マルコス・スザーノは参加しておらず、代わりにハミロ・ムソット(パーカッション)とクリスティアン・オーエンス(ドラムス)が参加。シアトリカルでポエティックなモスカの歌に絶妙な距離感で寄り添う。決して斬新なアレンジではないし、写真のセット以外は簡素なステージで飛び道具もない。けれども、(ヒット曲の再演も含めて)この瑞々しさは一体なんだろう?
 そして、同時にリリースされたDVDはライヴの進行とリンクさせながら、「心に引っかかった“ある曲”のメロディーのタイトルが思い出せず、何人かのアーティストに会いに行く男」を演じるモスカの姿が。その相手とは、ここ数年で彼に「最も強いインパクトを与えた」と語るホルヘ・ドレクスレルやマルチナーリアで、2人とのセッションの模様も納められている。ライヴでも共演しているティーンの子供たちによるパーカッション・グループ、バテ・ラタとの邂逅も含め、この映像はピエール・バルーとボサノヴァ人たちの稀有な交流が濃密に記録された「サラヴァ」の精神を受け継いだ作品であるとも言えるだろう。件の“ある曲”とはあの大名曲のことで、モスカは当然“あの人”の精神性も受け継いでいる。ロックの、そしてMPBとサンバの伝統と革新。点から線へ。[「月刊ラティーナ07年05月号掲載」texto por 佐々木俊宏]
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テーマ:音楽 - ジャンル:音楽

  1. 2007/04/23(月) 20:09:08|
  2. 商品紹介[ブラジル]
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