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カエターノ世代のアーティストたちの、衰えないクリエティビティー(「月刊ラティーナ」11月号インタビュー番外編3)

カエターノ『セー』へのインタビューで、雑誌では紹介できなかった貴重な発言を紹介していきます。

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(あなたをはじめ、同世代のMPBアーティストは現役でクリエイティヴな活動を続けている。でも他の国では非常に特殊なアーティストを除いて、このようなことはない。自分も含めた同世代のアーティストたちが音楽活動を40年近く続けていても創作意欲が衰えないのは、どうしてだと思っていますか?)

 それも、時々聞かれる質問だけど、まず僕は、それほど珍しいことだとは思ってない。ブラジル国外には、そういうケースがたくさんある。例えば、ボブ・ディランがそうだ。ルー・リードだってそうだし。そりゃボブ・ディランも、60年代のようにヒットパレードのトップに再び顔を出したりといったことじゃない。それは、僕の場合やシコなんかでも同じことだ(笑)。しかし、敬愛の念は残っているし、自己リスペクトも残っている。自分のレベルに忠実に仕事を続けていこうとする、自分自身への要求もね。僕は、それは普通だと思うよ。レイ・チャールズも、天才的な曲を書き続けながら高齢で亡くなった。フランク・シナトラだって、世界一のシンガーであり続けながら、ほとんど90歳まで生きた。ミック・ジャガーにいたっては、73歳になってもステージに上がっている。今でも、ロック/ポップ史上屈指のライヴ・パフォーマーだ。同じレベルで続けている。誰も彼とは比肩できない。実はそれが、いつもローリング・ストーンズの強みだったわけだけどね。そりゃ、過去には素晴らしい曲もあったけど。やはり曲が素晴らしいのはビートルズだった。ローリング・ストーンズには、何曲か素晴らしい曲がある。ただ、ビートルズには決して及ばない。でも、ステージではストーンズは天才的だった。今もだよ。
 それに、サラ・ヴォーンだって、彼女よりも巧く歌える女性歌手がアメリカン・ジャズに登場するのを見ないうちに亡くなってる。むしろ、今日まで登場していないわけだけど。エラ・フィッツジェラルドもだ。だから、そんなに稀なことじゃないと思うんだ。普通だよ。パブリック・キャラクターが常に入れ替わることを欲しているのは、市場だ。それに、市場を追いかけてるマスコミだ。彼らは毎日新聞を売らなきゃいけないから。公的人物だちが入れ替わるほど、新聞が売れるから好ましいんだよ。もっとも、交代があるというのが悪いというわけじゃない。むしろ、とてもいいこと、健康的なことだと思う。例えば、あなたが23歳だとして、同じ23歳の人間が曲を書いて歌い、演奏してみせているとする。この人間は、あなたが感じていることを感じて、表現している。同じ世代だからね。つまり、みんながみんな、過去に地位を確立したアイドルに注目しているのはよくないと思うんだ。例えば、アルゼンチンは長い間 ? とても美しいことだとは思うけど ? タンゴの重みに苦しんだ。60年代まで、他のどんなアーティストよりもカルロス・ガルデルのアルバムが売れていたんだから(笑)。ガルデルは30年代に亡くなってるんだよ。やっぱり、自分と同世代のアーティストが好きだというのは、健康的なことだと思うんだ。そういう人たちが登場した方がいいと思うし、登場したら嬉しい。他方で、年をとってきたら若い世代からは忘れ去られねばならない、若い世代からは関心を示されるはずがない、とも思わない。彼らには、興味深いものを作り続ける能力があるんだから。そもそも、そんなことは、どんな有名詩人にも有名画家にも有名なポップ歌手にもジャズ歌手にも起こっていない。ロックの歌手にだってね。だから僕は、そういうケースはあまり知らないし、一種の神話じゃないかと思う。僕やシコ・ブアルキやミルトン・ナシメントや…普通じゃないかな。




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  1. 2006/11/03(金) 12:06:50|
  2. カエターノ・ヴェローゾ[Caetano Veloso]
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